91歳の現役ロータリアン
坂戸ロータリークラブ  木 藤 文 雄

 90歳を過ぎても一線でロータリー活動を行い、楽しんでいる会員がいる。その人は当地区1994-95年度ガバナーの田中一郎会員。ガバナーを務めた後も、所属する坂戸ロータリークラブ(RC)で一会員としてロータリー活動に積極的に参加し、若い会員の手本となっている。
 私も50年ほど前から田中会員を知っているが、言葉を荒げるなど怒った姿を見たことがない。温厚で、青少年交換学生やローターアクターの指導にも熱心。40年余りの間、交換学生のホストファミリーを務めた。世話をした留学生の数は100人を超えるであろう。どんな言語の留学生であろうと、三か月で日本語と日本の生活を教え込んだ。今でも世話になった多くの留学生は、来日すると田中会員を訪ねてくる。そこには高校の家庭科の教師であった奥さまと、銀行員と高校教師の二人の息子さんの支えもあった。
 田中会員は、1923(大正12)年に東京・品川で生まれ、銀行に勤めていた父親の転勤で兵庫県今津市(現・西宮市)に移り、小学6年の3学期の時に台湾の台北に移った。子どものころから体が大きく、聡明だがわんぱくなガキ大将。小学校の時、いじめをしたことで転校も経験した。台湾から帰国後、東京帝国大学文学部東洋史科に入学したが、学徒出陣で東部5部隊に入営。終戦で大学に戻り、卒業後は考古学の道を進み、遺跡の発掘で日本各地を回った。
 坂戸RCの創立(1967年)当時は、地元の公民館長で、創立からクラブに携わっていた。創立7年目に入会したが、実質的には創立会員のようなものでクラブの生き字引である。当時から講演活動をしていたが、田中会員の講演のレパートリーは考古学以外にも幅広く、聞く人を飽きさせない。
 学者であるが、版画家でもある。身の回りの出来事やロータリーについてスケッチと版画で表現している。町並みのスケッチも数多く、全て説明が書き添えられている。50年の歴史を知ることができ、見ていて懐かしく楽しい。パーティーでは短時間で食事のスケッチをし、帰宅後絵はがきにして送ってくれる。実際の食事よりおいしく見えるから不思議である。それらは全て保存されており、田中会員の自宅の座椅子の周りには、700冊を超えるスケッチブックが所狭しと棲まれている。田中会員と昔話をすると、その当時のスケッチブックが即座に出てくるから驚きだ。
 今年2月、坂戸RC主催でインターシティーミーティングが開催された。懇親会で会員たちの川柳が紹介された。その川柳にはロータリーの楽しさや思いが多く綴られていた。特別賞に選ばれた人には田中会員の版画が送られた。 (第2570地区 埼玉県 建築設計監理)

ロータリーの友 2014年8月号より